・反歌
・はたちすぎれば
・悪夢のしっぽの話
・愛のゲーム電卓
・破滅夜曲
・反省の四畳半
・そだちかた
・おじぎのアリス
・大三元にて
・夏だより
・さかなバラード
・混乱
・個人的行く年来る年
・Ｓ・Ｆ (サイレント・フィクション)
・かくも長き停止
・た・た・ず・ま・い
・不幸の色をごらんなさい
・死体がタバコを
・非情のライセンス
・せつないおしごと
・しにがみ
・シングシンガソン
・あなたが別の女を愛する時に
・サンザンだ
・しあわせな女
★反歌
夜の暗闇に浮かぶ
意味のない街灯が大好きであります
困ったものだと思います
ドラマ性も
センチメンタリスムすらなく
ただ単に街灯はともるのです
ほんとに困ったもんです
★はたちすぎれば
昔 せんせにほめられた
変わっているねとほめられた
ほめられちゃったと日記につけて
それを抱えておおきくなった
あの子どこまで行ったやら
自分をいじめる他人の腕に
昔はやった日記帳― あァ
あの子の余白は黄色い余白
書くかしら
はたちすぎればただの人
★悪夢のしっぽの話
理想のタイプはと問われれば
私を殺せるようなヒトぉ！
などと
悪夢のしっぽをご存知か
振り向けば重荷
手に取れば宝
たぐれば無限寸
果てはいずこ
そこはいずこ
しっぽを伝って誰かが来る
予感 快感 悪寒
―待っている
実在を信じておりました
同じ闇のムジナよ
悪夢ともだちのしっぽは長く
命より長く
理想のタイプはと問われれば―
★愛のゲーム電卓
背の丸め方も痛々しい
あなたは孤独な人類の戦士
液晶ディスプレイに浮かぶ敵は
おお 計算通りの錯視
じんるいのそんげんかけて
そんげんかけてわってたしてひいて
ゼロ次元は論理の世界
ユーアーミスタロンリ頑張れ
愛と勇気の戦法受けてみよ
疲れ目で乱視の戦士
人間だから寝た。
★破滅夜曲
確・ 実
実は落ちる
どこかで落ちてどこかで腐る
ツマリオマエハ
生命体ノフリガ
ウマイ
いつも握力は人並以下だった
腕ふりまわし
泳ぎ出さず
爪もはがれず
ただ さかむけ
生物ハ系統発生ヲ繰リ返ス
集合無意識ハ決シテ自覚サレルコトガナイ
頭に頭蓋骨を感じる時
手遅れです
遅れていきます
周囲果てなくがらんどう
ソレデモ人権ハ付与サルル
脳ノ残量ニ応ジテ
★反省の四畳半
もーすぐ六畳間に移るので
今まで住んでた この
四畳半の分だけ反省しておこうと思う
四畳半
この広い四畳半いっぱいナルシズムしたら
死刑になるのじゃなかったか
誰が決めたか 私が決めた
法律が安全弁である
法律がなくても安全である
しあわせいっぱいハカリは無用
バネバカリ ハカリとったらバネばかり
部屋中を跳び回る
〈だから自分が中にいる時は
部屋のカギをかけないのだよ〉
四畳半はほどよいスペースで
バネのまねをするのに適している
部屋が片付くわけがない
四畳半
四畳半を捨てて外に出ると
化け物みたいな友達とか
友達みたいな化け物なんかがいて
こわくて利害計算はできない
選挙とブタバコの計算もできない
レイプと強盗の計算は
九九と一緒で忘られぬ
〈一番恐い場所は遠くじゃなくて
部屋を一歩踏み出した時の真横の闇よ〉
年収７０万以下前科なし
ただのガキ
四畳半
四畳半の下には
契約してない空間があって
四畳半の上には
上ったことのない空間がある
私反省します
この部屋汚しました
ふけばとれます
★そだちかた
そだててくれてありがとう みなさま
そだちつづけますわ わたくし
時代とかゆー名の
同じ巨大な石にケッつまづいて
はいずりながら歩いてきた
仲間たち先輩たち
育ち方は選べません
トラウマの向こう傷で
おびえるバカもいません
抱え込んだ同じ胆石
使い方を考えながら
(社会面やテレビや週刊誌で)
おべんきょおこたらず
そだつことは
なるようになること
ありがとうみなさま
すべての友人の選んだ
すべての運命的な精神の軌跡に
ほどほどに幸あれ
★おじぎのアリス
スカートのすそをちょんとつまみ
腰をかがめ足を曲げ
さりとて正面見すえ
小首かしげ
ゆっくり正しくおじぎする
のはムツカシイ
おひけえなすって
おひけえなすって
手前生国と発しまするは忘れましたが
あったことは確かです おっと
どちらさんもそのまま
一宿一飯
放浪のアリス
(アリスはウサギ穴を落っこちながら
空中で腰をかがめておじぎしようとしたけれど
体力なきゃあ無理でしょね)
なんの恨みもござんせん
だからスカートめくんないでってば
抗争の白刃かいくぐり
てくてくと
おじぎの国のアリスは行く
★大三元にて
中華飯店大三元、昼
おりしもテレビは事件報道
どォも 中華丼お願いします
おりしもレポーターのディスカッション
中華丼いっちょお
キャタツと銃剣で
白昼堂々殺された人の
丸顔はいかにも狡猾で その上
(なんかこわい事件あったんですねー)
かわいらしかった
(あ あれね こわいわねー)
(うんこわい) (おとーちゃんスープ出してないよ)
やはりこの、彼の育った環―
(あ すいませーん)
―境というものがですね、幼い頃から貧しく
どんよりと晴れ
乱視
大衆飯店
醤油差しで手を汚し
慣れた味を含み
電波を見ていた
殺された人の目は小さい
あの目を何人の目が見て
あの目が誰の目を見ていたかなんて
分かりませんね
こう天気がどんよりでは
(マッチ貸して下さい)
火を付ける汚れた手に
その時その瞬間にも生命線は健在だったのだろうけど
確かめようかと
思う筈もなく
漠然と
他人同士を結ぶ
憎みの糸や
四角形に完成して
今も静かに飛び交う電波が
溶け込んで流れている街の空気のことを考えた
私はいつもなら
大三元に出前を頼む
―いずれ また、
★夏だより
エビスビールのお中元
ほほほほほと笑いながら私は仕事屋さんをやるぞ
と思う夏の日さ
冬が好き
夏が必要
キラキラとちょーりょーするビキニのナルシズムに
ハチマキしめて「いよっねーちゃん」と声かける
(私はなんなんだ別にいーけど)
事を私は仕事と呼び
元気な太陽を吸うのさ
夏だより
夏生まれ
まだヘタクソ
いいやねまだ主題歌
本編は長く暑苦しく
ヘタすると再放送だけど気にしないやね
ワンパタンヨシモトシンキゲキ―
(ああ冬さま
凍りつく美しき孤立無縁の異形生物と荒野
を忘れたわけじゃない涼みにちょくちょく帰るわね)
―が 好き。
★さかなバラード
人間の足の下には
常に見えない魚が泳いでいる
ものとする
桜の木の下なら死体だから面倒ないが
なんせ人間の下ともなるとね
さかなたちは普段はおとなしいが
なにかズレがあると地上へハネ上がったりする
それがどっかで会ったような魚なら
多分自分の魚で
これが見たこともない豪華錦鯉だったりすると
会ってしまった人はどうするのだろう
きっと好みのタイプならかくまっておくな
しかしやっぱり分不相応な気がして
どーもしっくりいかないと思ってたら
ひょっこり本当の持ち主が回収しに来るんだ
鯉ノボリなら持っとけたのに
なんせ魚のブンザイで空を泳ごうてな
野望を持ったら野望の分だけ
体比重を軽くせねば
ナラナイ
布っきれのヒゴイに惚れる人はいるだろうか
まあ世の中広いからいるだろうが
それにしても５月にしか会えないなら
これではまるで洋楽ポップスの世界で
５月の春の日の思い出のために
記念の鯉ノボリを上げてるんだ
メルヘンは悪くないけどドラマじゃない
今問題なのは錦鯉の始末だ
彼女は美人
鯉コクにすればうまかろうが
純情な青年にそんなマネはできないし
ウロコに墨をぬって人目をゴマかすとか
魚拓とるとかやってる
場合じゃないし
おまえ
美人につりあう飼い主に
なんなさいよ
やっぱり一日ではムリだろが
とにかくもしや錦鯉が
錦を着てミエを張っている
ただのふなかも知れないなんて
思い込むのは良くないよ
やっぱり思い込むんだろうけど
★混乱
だから誰をどこに置けばよいの
混乱の夜
感動売り
誰がスキかと聞かれても
のめり込んだらみんな神様
美化したいな
定着したいな
抜けたらどんどこしょお
★個人的行く年来る年
夜の闇
その日ばかりはみんな起きてる
コタツにへばりついて
閉まった店の前で途方にくれて
出かける用意をして
テレビや神社の前で待ちながら
息をひそめて
膚さす寒気のつらい頃に
なぜか１年の境を区切る
不思議な夜
街灯も待っている
人間も待っている
神様もイメージできないくせに
この国では何かたった一秒の境の向こうの
広漠とした白いものをみんなが待って
いるのだった
私は家庭には居なかった
金さえなくなれば私を追い出す
だけどもちろん意地悪でもなんでもない
ホテルという空間に部屋をとって
なおかつ親交した人々と街へ外出し
時を待ちながら夜をふらついて
いたのでした
ほんとうに自由だった大晦日
私の払った金銭の分だけ
私に存在を許す空間を足場にして
私はどこを向いて何を見ても良かった
そして見回した闇の中には
息をひそめてたった一秒の瞬間を待っている
同じ瞬間を待っている人々が
居るはずで
ホテルの前
私達も待っていた
―――― 静けさ
――― (ムダバナシ)
時間ですね
時間のようです
聞こえない鐘の代わりに口でゴォンと
あけましておめでとうことしもよろしく
慣習の、神
そして私は幸福に眠ったのでした
お正月のことは分からないので
★Ｓ・Ｆ (サイレント・フィクション)
朝の白色光の柔らかい浮き方はどうだ
どうしてもこれはライトである
夜のトモシビの愛想のない実在感
たとえば朝食にクロワッサンとコーヒーがある
白い皿の上の工芸品― 好ましき、所得たもの
そうして食べていることがどんどん不思議になる
これは何の工程か
なぜやり方を知っているのか
これら物質の成分と組み立て方を、私は覚えねばならないのではないか
立ち上がって
表へ出れば
明らかに白い壁の、異国の街かも知れぬ
薄暗く湿ったジブンノクニの中で、あるいは金と共に夢見られ、
あるいは陳腐と皮相とののしられた、陽光の記憶
C'est midi ― マヒル (セ・ミディ― 万事休す)
ここでは人は殺されるものかもしれない
不思議な血管、血液
旅行している
記憶がある。今を旅行と知らしめるフルサトの体感覚
カット・バック
介入と消滅 黒
泳ぎに出かける、予定
★かくも長き停止
くう はく
余熱
ルーティンな
慣性駆動のそのあとに
かくも長き停止に泣きもせず
熱的終焉とか言っちゃって
そんなことでニヒれるほど情熱的であったのか
陽はまた昇る
なんぼでも昇るぞ
誰かが音楽を聞いていれば
音楽の分だけ時間は色づき
今朝の始発が行く響きが
やっぱり分子の歯車のあることを提示して
なにしてんの
勉強させて
わたしに色々やりかたおしえて
“つまんないわね毎日”
“そうかしら”
“まだ作ったことのない料理が山ほどあるでしょう”
わたしは主に本と人間をテキストに学んできて
だれかにごちそうしてあげたいじゃない
そしてまた時間のことを感じるわけだ
ぴちゃぴちゃと身を洗ってキモチ良い
じっとしてればエントロビ増える
気恥ずかしい青春の絶望をも
やっぱりまだ無くすわけには行かないし
街に出たり仕事したり仲間したり
そういう前向きさってのも要るとおもーの
人間って何でしょ
子供たちは宇宙に飽きたかな
青年は破壊に倦んだかな
中年はスケベに飽きそーもないぞ
老年は寝てる
わたしはここにいる、と
私たちまだ死んだこともないじゃない、ねえみんな
生理現象いっぱいぶんに
マクスエルの悪魔は都合何匹
かくも長き有在、そう
飽きることにはたっぷりと飽きたあとさ
★た・た・ず・ま・い
夏がきれい
夏は黙っていよう
一面の蛍光色紙的青と
濃緑にもさもさゆれる木を見たまえ
あのうごめく木と同じ大きさのはっぱ食いのケモノが
今立ってても驚かないぞ
たとえどんなに太ってても
夏の夜明けというものを
今初めて知るような気だ
早起きはミンミンゼミで
暗いうちから唐突に時間を刻み出す
ミーンミン シワーシワー じいい
あの日々違うきれいな紫が
ほんとうに太古からあったんだとしたら
文明なんてそんなモンだな
虫の羽音がでかすぎて
よく聞いたらそれは電車のガタゴトなんだけど
とりあえず静かだ
夏のすべてはたたずまいだ
なんの事件の背景にでも
使えそうな青だ。日だ。
★不幸の色をごらんなさい
苦しいよォと
助けてェと
言えなかっただけの
まるで結論みたいな台の上に乗っかって
ひっくり返ってコケて死んで
そいで死んだコトにも気付かずにまた台に上って
どこを見てたの、あんた。
アタマが悪いこと、知らなかったの。
心が死んだって、捨てりゃいいってもんじゃない。
不幸の色をごらんなさい
キレイで心がなごむでしょう
自分で自分を抱いてごらん
音楽のように
恥のように
ナミダよりは朝のように
人間やってる 体温みてる
だれかに抱かれたこともない
しんどいよォと言ってごらん
救いの鳥がやってくる、カン違いをして。
★死体がタバコを
死体がタバコを吸っている
死体が影落とす
夢
夜は夢
賑わいよりも夜は夢
愛されなかったら死体になるもの
なーんだ
愛されるためには愛されることを
あきらめなければならないもの
なーんだ
なんでしょう
死体のタバコがちびる
不可能で
有り得ないからこその
ユートピアに入り込んだヨ
さようならあなた ヒト
さようなら世界
死体は首かしげ
タバコを消した
不思議と二本目に火をつけた
★非情のライセンス
おとなりさーんは根暗がキライ
だからあなたがいっとーネクラ
わっかるかな
わっかんねえやな
ワタシは陽気なオバケです
わっからないなら心配するな
非情 非情
あなたは非情の戒厳令
心つらくて囲えば鉄条網
ワタシは非情のノンポリ死神
「うっーとーしいからお止しなさい
存在するのをまず止しなさい
アナタのキモチは分かります」
あ バカ
ニッコリ笑って黙って立ったよ
死やら病気はワタシの源氏名
二度とワタシは名乗らない
非情のイミは
情を消すこと
情と情とが次元べつなこと
★せつないおしごと
なんもかんも放り出してしまいたくなるね
こんな日は
シズカだから
なにもしなくていいんじゃないかと
思ってしまうこと君はないのか
黙って
手を握れば
春のような秋枯れが見えて
にぶい色の空にマヒする
目玉が４つかすんでいくんだ
あなた は ゲンキ？
ねむれ ます？
なにも ない シアワセはいやか
おしごとをしなくちゃね
とてもせつない社会参加
“ダメになんかならないわョ”
美しさには不幸の代価
きばってなくちゃ見えはしないサ
だけど 黙りたい
ときに本気で黙りたい
あなたのトナリで心底黙りたい
★しにがみ
しにがみは公務員
夜の街から音がする
ぺた ぺたぺた (いい靴買ってね)
今日の仕事について
手つづきと報告書についてギンミすれば
口元にあかり (タバコ)
月につるりと光る大鎌 (制服)
しにがみよ
しにがみよしにがみよしにがみよオバンです
闇は広々と
声はトーントーンとはねて響き
生き損じた者たちの夢をあがなうよ
“くっらーい”
“いや仕事ですから”
一杯やるのが謙虚なタノシミ
夜道を歩く人の目線の高さに赤いちょうちん
かれらの背中を見ていれば
こんな夜には夢も達者だ
“勤務時間は終わったからねえ”
コーンコーンと夜が鳴る
★シングシンガソン
断言するときゃ
音曲つけて
ラララ あ ライライ
唄いましょう
歌っているだけ
うたいたいのよ目なんか閉じて
心がチリチリ溶けるでしょーお
愛情なんかも出て来てこんちは
あなたにあげたい自閉症
そんな
ダメになりそなトランスふぶきに
自律神経失調のジャズ
マゾヒスティックにブルース
ナルシスティックにバラード
サディスティック・ロックに
クラシックはプライドで
歌謡曲はの・お・て・ん・き
民謡もよろしいナ
うたいましょ
うたっているだけ
何人いたってセックスできらあ
★あなたが別の女を愛する時に
あなたが別の女を愛する時に
私は渓流の水になる
まぶたがない
砕けても死なない
光きらめいてとどまらない
さらりさらり
生きてるようね
どこか目的地があるようね
うかべた木の葉を見ているようね
ほんとか ほんとか ほんとか
あなたが別の女を愛する時に
私はほんとうに静かになる
よく見えてしまいますよ
私以外の世界はすべて
生きては います 死んではいません
風よりは渓流に
せめてさらりさらりと音たてて
だから あなた
音の解釈はしないで
音の解釈だけは絶対にしないで
★サンザンだ
ゴカイ リカイ ゴカイイトミミズ
さんざんだ
さんざからまってなんなんだ
着くのも着かないのもどこか間違いで
誰かのまねをして誰かになりきれば
ジブンとのギャップが埋まらないよ
どう使えばいい
ゴカイイトミミズ アオイソメ
からまるかいかん
ゆめばかり見ているのがトクイになった
わたしは単なるゆめだから (キレイね)
にんげんなんかと
からまってついて離れ
あげくの果てにとりあえず持っときたいとか
アンタユメニ食ワレチャイカンゼ
あっちゃこっちゃ試行錯誤 イシキムイシキ
りかいごかいりかいごかいりかい みみずみみず
最終結論をまた
生物に持ち込んでそして
どーしよーというのかジンルイ
りかいごかいりかい サンザンだ
(しょんべんかけたらあかん)
★しあわせな女
花を
髪にさす少女の通るとき
わたしは地響きのもと踏みつけられる虫だった
愚かしやな女
何を望むこともできず
空を見ては遠く 酔えない
眼球が多すぎる
夢も多かった
明日はまだ今日の中にあり
生半可な知識だけちぎれて飛び狂う
動かぬ 動けない
大地は果たして私の身内か
山峡のだらだら道はどこへのぼる
宿命を信じるか
笑えてくる
なにか笑えてくる
なにか本当につまらない紙一重が
絶対の明と暗を分けている
愛する場所は薄明の地だ
すべておぼろなる無限の紫から
私もまた唯一の視線を返せるだろう
しあわせな 女
しあわせにも女であったために
・ついしん
前期… 高田馬場、石塚荘の二階の７号室にいた頃。後、詩にあるように、下の台所付きの六畳間に移ったのである。
その「石塚荘」も、バブルの絶頂期に地上げに巻き込まれ、買い上げられて消失し、現存しない。
中期… 「大三元にて」に描写された事件を憶えている人も、現在ではほとんどいなくなっただろう。
…そーゆー出来事があったのである。トヨタ商事事件といって。
今や世間は大事件が目白押しで、このくらいショックでも何でも無くなってしまったが、当時は衝撃的だった。
「さかなバラード」は、この頃描いていた「アブナーズ」のネタを考えるために書いたもの。
詩を書いてマンガのネタを考えるという事も、この頃はよくやっていた。
この詩は、「魚類変生」という一編となって実りました。
後期… 神経が参り、体がガタガタになる寸前の頃である。
なんとなくヒサンな詩が多いが、このあと事態は急転直下、な、なんと。
いくたはいくたまきのくせに、結婚話へと向かって行くのだった。