月章学Ⅲ　月章神器と伝承者

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　　　【月章神器】

・８個の月章に相対し、それぞれの形を象った「神器」と呼ばれる道具がある。これらは月章の力を最大限に高めるように作られているという。８個の神器は、その時代の第一種族（政権担当種族）の選ばれた者に伝承され、受け継がれていく。つまり、この物語の時代にはムアナの中の８名が神器の伝承者となっている訳である。月章神器がいつ頃、誰の手によって作られたかは一切分かっていない。ただ、それらは何か特殊な金属成分を含んでいるらしく、持ち主の精神的な波動を増幅し、何らかの力に変える機能がある事が判っている。

月章	神器	伝承者	神器の効果	備考
	ファンナ・オーン（満月の玉）	レイレ・レイカ・ミアン	無限の知恵を授ける・物質的欠乏を埋める	伝承者のレイカは封印され、長く眠っているため、この神器の力はレイカが目覚めるまで使う事が出来ない。
ファン
	メア・シャック（半月の櫛）	ナイナ・フェテル	テレパシー能力を高める・人の深層意識への介入を可能にする	これを持つナイナは、仮死状態であった他の伝承者達を目覚めさせ、通信者の役割を果たす。
メア
	エア・ピュイリ（三日月の槍）	ジャス・サイラ	可能性を最大限に増幅する・敵の弱点を突く	ムアナの種族月章でもあるため、これを伝承したジャスが次代のムアナ首長と決定された。ジャスはこれを武器にして戦う。
エア
	ディ・ビュラン（新月のビュラン）	シルリテウ・カロック	邪を滅ぼす・乱された物を整合する	「ビュラン」とは、テュアンに古代から伝わる弦楽器である。シルトは元々ビュラン奏者で、早くからこれを伝承され、弾いていた。
ディ
	マナ・クラァタ（離月の物見鏡）	コティン・エルゲ	真実を見抜く・隠された物を発見する	これを持つコットは、伝承者の中で一番年長で、ジャスが正式に首長を継ぐまで全員のまとめ役となる。
マナ
	ミアノ・キャタウ（接月の手箱）	オレアック・ニオ	戦闘力を高める・惰性を破り、状況を逼迫させる	これを継ぐ者は戦士になるという。オレアックは戦闘の中心となる。
ミア
	メトア・ティティ（融月の首飾り）	マユリ・ベラナヴァ	異質な物同士を融合させる・人を結束させる	これを持つマユリは伝承者を裏切り、地球人側につく。融月の力で家畜兵器（マデュ・レイ）の製作に協力する。
メトア
	モーム・キルク（二重月の鏡）	アーシェ・イルド	生命力を与え、弱った者を復活させる・近い未来を予知する	アーシェはジャスの配偶者だが、当初残党狩りのラウラ達に拉致されている。神器の「予知の力」が狙いであるらしい。
モーム

　　　【伝承者の意味】

・どの時代、どのような判定基準で「伝承者」が選ばれるかは伏せられている。決定するのは、ウォノの高官を交えたムアナ元老院で、おそらく「神器との共振力の最も高い者」を密かに調べ、選抜しているのであろう。理由は後述するが、神器それ自体は男女の別なく伝承できても、４つが男性、４つが女性と、伝承者の男女数を同じにせねばならない。その様な兼ね合いや、時代の切り替えを行う時期については、影で長い討議が行われるものと思われる。

・神器は、ただ儀礼のために伝承されるわけではない。月章学Ⅱで述べた「時代の相」を決定し、次の時代を導く重要な鍵となるのである。「時代の相」は、二つずつの神器の組み合わせによって決定されるが、これは有り体に言って、「どの神器を持つ者同士が結婚するか」「パートナーとなるか」にかかっている。ムアナは幼体の時代が長く、現実に「結婚」して暮らす期間がわずかであるため（結婚して程なく寿命が尽きるから）、パートナーになる事を誓い合った者同士は「配偶者」（リィウイム）として、長い婚約期間を過ごす。もちろん結婚は本人同士の意志によるが、８個の神器を伝承された者達は、その組み合わせが時代を左右する重要なものとなるため、本人の意思はなかなか通せず、パートナーは元老院などのアドバイスに従って決める事が多い。が、この物語では、元老院の強い要請と忠告を無視し、ジャスは自分の意志で配偶者にアーシェ・イルドを選んでしまう。この組み合わせが最も危険な「乱の相」を作り、結果テュアンは戦争の時代へと突入する事になる。いわば主人公のジャスが「戦争の引き金であり、元凶」でもある訳だが、「伝承者」はそれ自体、時代の意志でもあり、この神器の継承の時期がちょうど「地球人」がテュアンと接触を始めた時期と重なった事を考えれば、ジャスの行動は運命的なものであったとも言える。

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