(高校・文芸サークル／文芸同人誌さろおむ時代作品)
・雨が降る
・赤と黒
・最後の晩餐
・おイタしちゃだめ
・疲
・おにく
・じゃんけんぽんの果て
・午前３時の春
・かじられた死
・ついていけない
・通勤者
・かみのうえ
・よわたり
★雨が降る
雨が降ります
濡れます
風邪を引きます
しかし悲しい事には
傘がない
傘をさします
濡れません
風邪を引きません
しかし悲しい事には
雨が降る
★赤と黒
火のいろ
血のいろ
赤のいろ
赤の中から
逃げられぬ
黒くなろうと
火を消して
黒くなろうと
血を抜いて
黒くなれずに
くろずんだ
火のいろ
血のいろ
赤のいろ
赤にしあれば
うつくしき
★最後の晩餐
ふぁいなる・さぱー (さいごのばんさん)
裏切り者を告発できる夜
キビシイ愛にも休日を
与えたあなたはやっぱりエライ
やっぱり… 人の子？
「ここに 私を売った者がいる」
★おイタしちゃだめ
女の自己愛
男の見栄張り
禁句を黒塗り
フェアプレイ男女平等
―おだまり！
おイタしちゃ だめっ
★疲
自分の書いたラブレターを
出さずにむさぼり食い
食あたりでのたうち回った
女。
うん。
一人芝居は無罪だよ。
狂気も無罪だよ。
安心してお休み。
病気が治れば出ておいで。
社会さまに許されて
疲れた女 薄笑い。
眠る。
★おにく
どうしよう
どうしよう人間が
人間が見えなくなっちゃった
おにくしか見えなくなっちゃったどうしよう
あ
どうしようも見えなくなっちゃった
★じゃんけんぽんの果て
負けるのは
おいらのチョキのせいでなく
あんたのグウのせいでなく
ましてやパアのせいでなく
ははは
すべてはただのじゃんけんぽん
どんぐり３個の潰し合い
本気で怒るなアホになるうっ
★午前３時の春
どこがサイレンが鳴っている
だけどラジオも鳴っている。
臆面もなく笑い出せば
眠れないと母がうめき
サイレンは遠のいて行く。
午前３時
遅れがちの時計と
粉のまま食ったコーヒーで
空間に戒厳令をしいた。
からっぽじゃないか
幸福じゃないか
まだ ３時じゃないか
ラジオによると
春が来ている。
★かじられた死
気がつくと
余白は全て“睡眠”という単語で埋まり
息もつけないほどのラッシュアワーでした
つり革の先に輪っかが無いため
つかまろうとしたらするりと手が滑って
ぶっ倒れたのでついでに寝ていると
丸ペンにつき刺されて飛び起きました
後からは“睡眠”がせまり
右手にはジスマークつきの廊下が伸び
左手ではさっきの丸ペンが
かぶらペンや鉛筆たちと手招きをし
俺は三方向にちぎれ飛んで
自分の眼球の位置も判然としなくなりました
もういちど気が付くと
真っ暗な部屋の中
こたつにもぐり込んで寝てました
…と 思いきや それは
わたしの体のもぐっている部分が
かじり取られている“死”なのでした
★ついていけない
「ついていけない」
と 言われた
すると
私は知らないのに
人は知っているのだ
私がどこに行くのか
★通勤者
だってさぁ
コンクリートは血なんか流さないわよぉ
そうよねえ
ペンキって甘いんだからぁ
わあわあわあ
わあわあわあきゃあきゃあきゃあ
さあ ・ しごとしごと。
★かみのうえ
かみのうえに
じがをこすりとって
ふんづける
ちのでないつぶれかた
★よわたり
ひょーきん
カタレプシー。客観。クソ度胸。
ぶりっこ
エクスタシー。狂気。どぜうの逃げ方。
ニヒル
アイデンティティ。理知。必死の自信。
熱血
パラノイア。憎悪。最後のプライド。
・ついしん
えー、当時を知る人にしか分からないでしょうが、文芸サークル誌「ういっと」及び同人誌「さろおむ」未掲載文のみです。(ほぼ。)
極力、「その世界」にハマり込んでいない文だけ… と思って探したら、いくらもなかったのね。これがまた。
いくたの一編の作品の裏には、常に膨大な量の「自主的ボツ作品」が存在します。つまり…
書くだけならうだるほど書いているワケだ。それは現在でも変りません。 (少しは効率良くなったけど…)