帰還　〈大地はここにあるのに〉

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いつの間にか民主主義になった

大地はどこを歩いても良いらしい

太陽は万人のものらしい

それでも所有者の立て札と評価価格の値札は付いているようなのに

土粒の隅々にまで名前が書いてあるようなのに

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大地に足を置けぬ人々は

地下の奥にある大地の真髄に祈って

還るべき場所の使用許可を求めた

土に求めた

空に求めた

海にも

しかし人類のうちただの一人も

いまだ許可証の交付を得ることを見ない

たぶん代償が足りぬゆえに

空虚な肉で膨れた身を投げ出しても対価に足りぬゆえに

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ビニールやプラスチックやゴムも

いつかは消化できるかも知れない

と　大地は溜息を付いた

それらは吐き気がする程まずく

大地は体を壊して何度も寝込んだのだ

なのに　やはり少しも美しくはないのに

今はそれらを憎む気も起きない

と　大地は溜息を付いた

まるで悪い夫に慣れていく妻のように

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亡霊が住めないよう大地の隅々まで明かりで照らして

怪しい隙間を全てコンクリートで固めて

さあ安心だ　と汗を拭いた時人類の足元は崩れた

亡霊が住めない場所には生者も住めない事を

大半の健全な人類は知らなかった

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わたしはここにいるのに

大地はここにあるのに

地下を掘るばかり

空を飛ぶばかりで

地表はどこにいった

歩ける確かな側面はどこにいった

愛した筈の幻さえ雲霧飛散して

大気には味がなく

もたれる柱は倒れ朽ち果て

お前が代わりに立て　という

実体のない城に住めという

全ての虫を殺した時土は消えたのか

惨めな灰と氷をどけた時地球は無くなったのか

さして意味のない土くれの一粒に

明日への地図が書き込まれているなら

全てを再び拾い上げ組み上げねばならないのか

伝説の創造神がそうしたように

そこまで傲慢になりたくなかった

だから去った　そして帰った

気が付けば人は皆足元を失っていた

権利もなく　否定もなく　しかし方向もなく

ただひとくれの土塊に足を置く事をためらっている

大地はここにあるのに

　　　愛はこの世のどこかにあった

それは　多分押入れの奥のような

場所にあった

前には重いダンボール　古くなった毛布

押入れの襖は家具があるので開かない

どけても湿気でやはり開かない

つまり　そんな理由で出て来ない

それは　多分その時その人の

目の前にあった

エロ画像より恥ずかしいらしく

目線が泳ぐ　上へ下へ横へ

逃げられなくなると俯き固く目を閉じる

つまり　そんな理由で認識されない

愛はこの世のどこかにあった

あったのは確かだが証明できない

ヒーローの陰に隠れる子供のように

誰もが声援し褒め称えて終わる

自分がなれる訳はないので

愛はこの世のどこかにあった

あったのは確かだが行使されない

まるで最終兵器のように隠される

仮にそれが全てを救う物だととしても

行使し自分の身を滅ぼす事の恐さに

　　　　　　・ついしん

　再びまた詩を書き始めた、訳ではなくただの思い付き。「帰還」と「愛」の間には実は３年以上の月日が流れている。(^^;)ここは、ごくまれに「詩らしきもの」を思い付いた時の為のメモ欄という事で。

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